短期前払費用の特例・適用できるか判断のポイント4つ~否認されないように注意!!
こんにちは。
和歌山市の女性税理士、内西です。
今回は短期前払費用の特例について、適用を受けられるのかどうか判断するポイントを解説したいと思います。
どんな特例?
原則、前払費用は必要経費や損金には算入できません。ですが、この特例の要件を満たしていれば支出時に全額必要経費、損金に算入することができます。
利益が出ている年において、個人であれば、12月頃、節税対策として、1年分のコピー機のリース料を前払したり、法人であれば、決算月に1年分の保険料を前払いしたりして、利益を圧縮することがあると思いますが、これらは、この特例を使ってできるのであり、要件を満たしていなければできません。
4つの要件
以下4つの要件を満たすときにおいて初めて支出時に全額、必要経費や損金に算入することができます。
① 支払い日から1年以内にサービスの提供を受けること
② 次回以降も継続して前払いをすること
③ 不動産業における受取地代と支払い地代のように収益と対応させる費用でないこと
④ 等質等量の役務提供であること
①について
🙆支払い地代を3月末に4月分から翌年の3月分の12か月分を一括して支払っているような場合
理由:支払時の一年後の翌年3月には役務提供が終わっているため特例適用OK
🙅2月末に4月分から翌年3月分の12か月分を一括して支払っているような場合
理由:2月の支払い時の1年後の翌年2月においてまだ役務提供が終わっていないため特例適用不可
②について
今回は1年分前払いするけれど、1年後の次回は月払いにするなど継続的に同じ処理をしていないものは特例適用不可(利益操作のために使われることを避けるため)
③について
収益に対応させる費用についてはこの特例の適用はありません(収益に対応する費用は同じ期に計上しなければいけないので:費用収益対応の原則)
例 不動産業において家賃収入に対応する支払地代など。支払地代を年払いしても家賃収入が毎月計上されている場合には年払いしてもこの規定の適用は受けられません。
④について
🙆建物や土地の地代、コピー機などの機械のリース料、サブスクリプションの料金(所有権が移転しないもの)や保守料、駅などに設置される看板の広告宣伝費など
🙅弁護士の顧問料、コンサルティング費用👉等質等量ではない
リスティング費用👉クリックの数により費用が変動するので等質等量ではない
広告の雑誌への掲載料CMラジオの放送などの広告宣伝費👉掲載、放送されたときに費用化すべきもので等質等量ではない
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前払費用と前払金の違い
前払費用:継続的な役務の提供の対価で、まだ、提供を受けていない部分の費用をいう
前払金:物品の購入の対価で、まだ、その物品の提供を受けていない部分の金額をいう
この特例は「短期前払費用」の特例なのでそもそも「前払費用」に該当しないものについては適用がありません。
例えば、雑誌の定期購読で1年分前払したような場合には、これは物品の購入の対価になり「前払金」になるので適用はありません。(電子購読はOK)
ただ税務調査において、金額が新聞代などのように少額である場合には重要性の原則により指摘されないことがあります。
「たいしたことないから、ま、いいか」
ということです。
とはいっても、厳密にはダメですので、指摘されたら反論の余地はありませんね。
恩恵は最初だけ
この特例は、継続適用を要件とするところから、利益の圧縮として恩恵を受けるのは最初の期のみになります。
例えば個人事業主がこれまで月払いしていた看板の広告料を10月に向こう一年分を年払いしたとします。
この場合本来の月払いで計上していたならば、12ヶ月分の広告宣伝費が計上されるところ、
10月に11月から翌年10月迄の12ヶ月分を短期前払費用として支払います。
この特例の適用を受けるとするとこの年は 10ヶ月+12ヶ月=22ヶ月 費用を計上できます。
ですが、その翌期は、10月に1年分を前払するだけなので12ヶ月分の広告宣伝費しか計上されません。
このように、利益を圧縮できたとしても年払いに変更した最初の期だけになります。
一度年払いにすると継続して年払いにしないといけないので、資金繰りも考えておかないといけません。
参考 所得税 法人税通達
個人の所得税に関して以下のような通達があります。(所得税基本通達37-30の2)
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下この項について同じ。)の額はその年分の必要経費に算入されないのであるが、その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入している時はこれを認める 。
法人に関しては以下のような通達があります。(法人税基本通達2-2-14)
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、昭61年直法2-12「二」により改正)
(注) 例えば借入金を預金、有価証券等に運用する場合のその借入金に係る支払利子のように、収益の計上と対応させる必要があるものについては、後段の取扱いの適用はないものとする。
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