上場株式等の配当~投資法人の投資口の配当について配当控除が適用できない理由

こんにちは。

和歌山市の女性税理士、内西です。

今回は、プチ投資をしている方にちょっとした注意点を書きたいと思います。

上場株式等を保有し、配当所得がある方。

特定口座で源泉徴収有りを選択していると、証券会社が株の譲渡や配当にかかる税金を計算しさらには納税まで代行してくれます。

1年間の損益は証券会社から送られてくる「特定口座年間取引報告書」で分かります。

源泉徴収有りの口座を選択している場合、何もせずに放っておいてもなんの問題もありません。

個人の儲けにかかる所得税や住民税が、すでに天引きされて入金されているため、納税済だからです。

申告をしないことを選択することを、申告不要を選択するといいます。

配当所得について

ところで、株式を保有していると配当が得られますが、この配当、

確定申告で、「総合課税」で申告すると、所得税の計算上、「配当控除」という税額控除を使うことができます。

この配当控除を受けることができたら

配当について、確定申告をしたほうが

すでに源泉徴収されている税率(20.315%)よりも低くなる場合があります。

(上場株式の配当金(大口の株主等が内国法人から支払いを受ける上場株式の配当金を除く。)の場合のみについて以下書きます。)

つまり、申告した方が節税になるのです。

例えば、

総合課税の所得税の税率が10%のサラリーマンの投資家がいたとします。

源泉徴収有りの特定口座で取引をしていたら、

配当所得から20.315%の所得税と住民税が源泉徴収されています。


この人が

配当所得について総合課税で確定申告するとします。

総合課税の所得税の税率が10%なので、配当所得についてかかる税率は10%です。

復興特別所得税が所得税の2.1%かかるので、合計10.21%です。

ここに住民税(一律10%)を加えると20.21%です。


これだけならば、

申告不要 20.315%>20.21%

でわずかながら、申告した方がいいかしら・・・と手間を考えると、もういいかというくらい些細な差です。


けれども、

総合課税で配当所得を申告した場合には「配当控除」というものが受けることができます。

この「配当控除」は申告する方の、課税所得金額によって控除の率が違うのですが、

課税総所得金額が1,000万円以下の場合

◎剰余金の配当等に係る配当所得(特定株式投資信託の収益の分配に係る配当所得を含みます。以下同じです。)の金額×10%

◎証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得(特定株式投資信託の収益の分配に係る配当所得を除きます。以下同じです。)の金額×5%

になります。

配当所得の10%又は5%の所得税が返ってくるのであれば、総合課税で確定申告した方が有利です。

20.21%ー10%=10.21%(ここからさらに住民税も2.8%控除される)

OR

20.21%ー5%=15.21%(ここからさらに住民税も1.4%控除される)


申告しなかった場合の20.315%よりもはるかに少ない率になります。

どうして控除してくれるのか?

配当控除ってなんでしょう?

どうして控除してくれるのでしょうか?

別に意味もなく控除するわけではありません。

控除してもらってしかるべき当然の理由があるのです。

配当とは、会社の利益から法人税等の税金を控除した後の利益処分として、株主にたいして分配するものです。

すでに法人税等の税金を控除された残りの処分として分配された配当を受け取った株主個人にさらに所得税等の税金をかけるということは二重課税になってしまいます。

この法人税と所得税の二重課税を避けるために設けられているのが、配当控除です。

投資法人の投資口の配当所得には配当控除の適用がない

投資法人とは、不動産投資信託のことです。

野村證券のHPの証券用語解説集に以下のように記載されています。

「投資法人」とは

「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づき、特定の資産への投資・運用を目的として設立される法人。会社型投資信託ともいう。
株式会社の株式に相当する投資口を発行して投資家(投資主)から資金を集め、有価証券や不動産などの資産に投資することで運用する。ただし、法律によって投資法人自らが資産を運用することは禁じられているため、実際の運用は投資信託委託業者に委託される。投資主は、保有する投資口数に応じて投資法人から収益の分配を受け、投資主総会における議決権を持つ。代表的な投資法人として、不動産投資信託(REIT)などがある。

この投資法人が発行する投資口に係る配当の場合、配当控除の適用がありません。

それは、投資法人は、分配可能利益の90%超を配当として分配する場合には、その配当した部分について損金として扱うことができるため、

その配当の部分に対しては、法人税が課税されていないというところにあります。


配当控除は、法人税と、所得税の二重課税の回避のために設けられているものなので、法人税が課税されていない配当には当然適用がないという理由なのです。

証券税制は複雑

証券税制は複雑です。

スポットで専門家に相談することをおすすめします。

所得税や住民税が還付されるからという理由で、確定申告をしたばっかりに、翌年の国民健康保険料が高くなってしまったり、医療費の自己負担が増えたりと・・・(住民税については申告不要を選択するという方法があります。・・状況によってはできない場合あり)

翌年に届く保険料の納付書や健康保険証をみて驚く羽目にならないように・・・

あらゆる事を総合的に考えて配当や上場株式等の譲渡を申告するかしないかを考える必要があります。



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